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入居時点検表(「入居時チェックシート」「現況確認書」とも呼ばれる)は、入居開始時点での部屋の状態を記録する書類だ。法律で作成が義務付けられているわけではないが、退去時の原状回復費用を巡る争いで重要な証拠となる。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃貸借契約上の原状回復義務は「借主の故意・過失による損傷」に限定されると明記されている。入居時から既に存在した傷・汚れを借主負担にしないためには、点検表という形で書面に残すことが不可欠だ。
民事訴訟法第247条の自由心証主義により、裁判所は提出されたあらゆる証拠を総合判断する。入居時点検表は「処分証書」ではないが、作成日時・記載内容・管理会社の確認署名の有無によって証拠能力が大きく変わる。
正式な点検表には以下の項目を必ず記載する。
管理会社から所定のフォーマットが交付される場合はそれを使用し、ない場合は市販の点検シートまたは自作のものを使う。書式は問わないが、上記の必須項目を必ず含める。
各部屋について以下の角度で記録する。
「和室6畳(東向き) 床(畳):北東角に直径5cm程度の焦げ跡(写真1)/西側中央に幅10cmの色褪せ 壁:南壁画鋲穴3か所(写真2)/東壁の壁紙剥がれ20cm(写真3) 天井:シミなし 建具:障子の右下角に5cmの破れ(写真4)」
漠然と「畳に傷あり」とは書かず、位置・大きさ・形状・写真番号を必ず明記する。後日「どの場所の傷か特定できない」と言われないためだ。
水回りは劣化しやすく退去時の争点になりやすいため、特に詳細に記録する。
「システムキッチン シンク:排水口周辺に錆あり(写真5)/水栓ハンドル動作OK/浄水器なし ガスコンロ:3口IH、すべて動作確認OK/天板に傷なし 換気扇:動作OK、内部に油汚れ(前入居者からの残存と思われる)(写真6)」
設備の動作確認は「動作OK」「動作不可(具体症状)」と区別して記載する。動作不可の設備があれば速やかに管理会社へ修繕依頼を出す。
「ベランダ(南向き、幅2m × 奥行1m) 床:タイル割れなし/排水口の詰まりなし 手すり:塗装剥がれ部分的にあり(写真7)/ぐらつきなし 玄関 ドア:内側下部に5cmの擦り傷(写真8)/鍵穴動作OK たたき:タイル欠けなし/土汚れ軽度」
スマートフォンで撮影した写真にはGPS位置情報・撮影日時のメタデータが自動記録される。これらの情報は写真の改ざんを否定する重要な証拠となるため、撮影後は加工せずオリジナルファイルを保存する。クラウドストレージ(Google Drive・iCloud等)に自動アップロードする設定にしておくと、紛失リスクも下がる。
点検表の作成だけでは不十分で、管理会社へ正式に送付することで初めて証拠としての効力が高まる。
推奨される送付方法
避けるべき方法は「口頭報告のみ」「LINE等の私的SNSのみ」「手渡しで受領印なし」だ。これらは後日の争いで証拠として弱い。
点検表は契約書ではないため、押印は法律上必須ではない。ただし入居者の署名・捺印(認印で可)があれば「本人が作成した書面」として証拠能力が高まる。管理会社の確認印がもらえればさらに強固な証拠になる。
入居後2週間以内に管理会社へ送付する。あまりに遅れると「入居後に生じた傷を入居前として記録した」と疑われる余地が生じる。
退去時まで原本を保管し、退去後も2〜3年は控えを保持する。原状回復費用の請求は退去後数か月後に発生することが多く、争いが訴訟に発展した場合は数年単位で証拠が必要になる。
入居時点検表は「位置・大きさ・形状・写真番号を明記」「メールまたは郵送で正式送付」「2週間以内の送付」「退去後2〜3年の保管」が実務上のポイントだ。法的に書式の指定はないが、これらの実務を守ることで原状回復トラブル時の証拠能力が大きく高まる。記入例とテンプレートを参考に、自分の物件に合わせた点検表を必ず作成・送付してほしい。
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