近年、日本各地で豪雨による洪水・土砂災害・内水氾濫などの水害被害が増加しています。賃貸物件を選ぶ際、家賃・間取り・設備は必ずチェックするのに、「水害リスク」を確認していない方は意外と多いのではないでしょうか。浸水した賃貸物件に住んでいると、家財の損害はもちろん、生活の継続が困難になる場合もあります。この記事では、賃貸不動産のプロとして、ハザードマップの使い方・水害リスクの高い地域の特徴・物件選びで注意すべきポイントを詳しく解説します。
ハザードマップとは何か
ハザードマップとは、自然災害(洪水・土砂崩れ・津波・高潮など)が発生した場合に被害が想定される地域と、その程度を地図上に示したものです。市区町村が作成・公開しており、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」では全国どこでもオンラインで確認できます。
**主なハザードマップの種類** ・洪水ハザードマップ:河川が氾濫した場合の浸水範囲と深さを示す ・内水ハザードマップ:下水道等の排水能力を超えた雨水による浸水想定 ・土砂災害ハザードマップ:土砂崩れ・土石流・地すべりの危険区域を示す ・津波ハザードマップ:海岸付近の津波浸水想定区域を示す ・高潮ハザードマップ:台風等による高潮被害の浸水想定を示す
住もうとしている地域がどのリスクに晒されているかを複数のマップで確認することが重要です。
ハザードマップの見方——浸水深の目安を知る
洪水ハザードマップでは、浸水の深さが色分けで示されています。一般的な色分けの目安は以下の通りです。
- ・0.5m未満(薄黄色):床下浸水の可能性。1階の床上は被害を受けにくいが、道路が冠水する
- ・0.5〜1.0m(黄色):床上浸水の可能性。1階の生活空間に被害が出る
- ・1.0〜2.0m(橙色):1階全体が浸水する可能性。避難が必要
- ・2.0〜3.0m(赤色):2階の床付近まで浸水する可能性。命に関わる危険性
- ・3.0m以上(濃赤・紫色):建物の2階以上まで浸水する可能性。極めて危険
特に1〜2階に住む賃貸入居者にとって、浸水深が0.5mを超えるエリアは十分な注意が必要です。
水害リスクの高い立地の特徴
ハザードマップを確認する前に、以下のような地形的特徴がある場所は水害リスクが高い傾向があります。
**河川の近く・低地・扇状地の末端部** 河川に近い土地や、周囲より低い土地(低地・谷地・窪地)は洪水・内水氾濫のリスクが高い場所です。古い地名に「沼」「池」「谷」「川」「浜」「洲」「堀」「田」などの字が入っている地域は、かつて水辺・低湿地だった可能性があります。
**丘陵地・山際の土地** 傾斜地の近くや山際の土地は土砂災害のリスクがあります。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の指定を受けている場所は特に注意が必要です。
**海抜(標高)が低いエリア** 国土地理院の地図では標高を確認できます。海抜0m地帯(ゼロメートル地帯)は特に水害リスクが高く、大都市圏では東京・大阪・名古屋などに広く存在します。
賃貸物件選びで実践すべき水害リスクチェック
**① 内見前にハザードマップを確認する** 物件の住所が決まったら、まず国土交通省のハザードマップポータルサイトや市区町村のハザードマップで確認しましょう。内見前に確認することで、高リスクエリアへの無駄な内見を避けられます。
**② 建物の構造と築年数を確認する** 建物が新耐震基準(1981年以降)に対応しているかはもちろん、建物の基礎高(地面からの床の高さ)も確認しましょう。基礎が高い建物は、軽微な浸水では床上浸水を免れる可能性があります。
**③ 過去の浸水歴を確認する** 不動産会社に「この物件・この周辺で過去に浸水被害があったか」を確認しましょう。2020年8月に施行された改正宅建業法施行規則により、不動産会社はハザードマップにおける所在地について説明する義務があります(重要事項説明での説明義務)。
**④ 水害保険(家財保険)への加入を検討する** 賃貸物件に加入が義務付けられている火災保険は、基本的に「火災」を対象としていますが、水災(洪水・土砂崩れ等)のオプションを追加することができます。水害リスクの高いエリアに住む場合は、水災補償を加えた家財保険への加入を強くお勧めします。
仙台市周辺の水害リスク
仙台市は東部に仙台東部道路沿いの低地・農地地帯が広がっており、東日本大震災(2011年)では津波被害を受けた地域もあります。また、広瀬川・名取川流域では大雨時の洪水リスクがあります。仙台市のハザードマップは仙台市公式サイトで確認でき、洪水・土砂災害・津波の各マップが公開されています。郊外エリアや川沿いの物件を選ぶ際は、必ず仙台市のハザードマップで確認することをお勧めします。
まとめ——ハザードマップ確認は賃貸選びの新常識
賃貸物件選びにおいて、ハザードマップの確認はもはや「やっておくとよいこと」ではなく「必須の事前調査」です。水害は一度発生すると生活再建に長期間かかります。家賃の安さや利便性だけでなく、「安全に長く住めるか」という視点を加えて物件選びをすることが、将来後悔しない賃貸選びにつながります。