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区分所有法改正2026と賃貸借主の権利——建替え・敷地売却決議が賃借人に与える影響と対処法

2026-06-10

2026年4月施行の区分所有法改正により、老朽化マンションの建替えや敷地売却が進めやすくなりました。賃借人として知っておくべき影響・リスク・権利を解説します。

区分所有法改正2026と賃貸借主の権利——建替え・敷地売却決議が賃借人に与える影響と対処法
#区分所有法改正#賃借人の権利#建て替え#修繕積立金#借地借家法#退去#老朽化#マンション管理
森

監修: 森 信幸エムアセッツ株式会社 代表取締役 / 宅地建物取引士(宮城県 第018212号)

目次

  1. 01区分所有法改正とは何か——2026年4月施行の背景
  2. 02賃借人に最も影響する「建替え・取り壊し」の動き
  3. 03敷地売却決議——賃借人が知っておくべき新制度
  4. 04管理組合の電子化と賃借人のかかわり
  5. 05築古マンションの賃貸物件選びで注意するポイント
  6. 06賃借人としての正当な権利を理解する
  7. 07まとめ——改正を理解して賢く物件を選ぶ

区分所有法改正とは何か——2026年4月施行の背景

2026年4月、約40年ぶりとなる区分所有法の大規模改正が施行されました。この改正は、老朽化マンションの増加や所有者不明問題といった深刻な課題に対応するために行われたものです。

区分所有法とは、分譲マンションのように一棟の建物を複数人が区分して所有する場合のルールを定めた法律です。賃貸マンションに住む方には直接関係のない法律に見えますが、実は「建替え決議」「売却決議」といった仕組みの変更が、賃借人の生活に大きな影響を与える可能性があります。

今回の改正のポイントは大きく次の3点です。第一に、建替え決議の要件緩和(耐震性の不足など一定の事由がある建物は5分の4から4分の3へ引き下げ)、第二に、建物敷地売却決議・取壊し決議などの新設と、これらの決議に伴って賃借人に賃貸借の終了を請求できる制度の創設、第三に、所在不明の区分所有者を決議の母数から除く仕組みや、管理が行き届かない専有部分・共用部分を裁判所が選任した管理人に管理させる制度など、管理の円滑化です。

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賃借人に最も影響する「建替え・取り壊し」の動き

賃貸マンションに住む方が最も注意すべきなのは、建替えや取り壊しが決議された場合に賃貸借契約がどうなるかという点です。

マンション全体で建替えが決まると、改正法で新設された「賃貸借の終了請求」(区分所有法第64条の2)により、建替えに賛成・参加する区分所有者や部屋の貸主は、賃借人に対して賃貸借の終了を請求できます。請求から6か月が経過すると賃貸借は終了し、借地借家法の正当事由は求められません。その代わり、貸主は賃貸借の終了によって通常生ずる損失の補償金を支払わなければならず、賃借人は補償金の提供を受けるまで明渡しを拒むことができます。老朽化建物の建替えに伴う立ち退きの実務的な流れと交渉術は老朽化建物の建て替えで立ち退きを求められたら——入居者の権利と交渉術で詳しく解説しています。

2026年の改正では、老朽化マンションの建替えをより進めやすくする方向性が打ち出されました。これにより、築年数の古いマンションに賃貸で住む場合のリスクが、従来よりも高まる可能性があります。

具体的には、以下のような流れで賃借人への影響が生じます。

  1. 管理組合で建替え等の検討が始まる
  2. 区分所有者の集会(総会)で建替え決議が成立
  3. 区分所有者などから賃借人へ賃貸借の終了請求(区分所有法第64条の2)
  4. 請求から6か月で賃貸借が終了し、補償金の提供を受けて退去

耐震性や火災に対する安全性の不足、外壁の剥落のおそれなど法務大臣が定める基準に該当する建物では、建替え決議の要件が4分の3に引き下げられており(同法第62条第2項、2026年4月施行)、老朽化マンションでの合意形成がこれまでより容易になっています。

出典:e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」

出典:e-Gov法令検索「借地借家法」

敷地売却決議——賃借人が知っておくべき新制度

今回の改正で新設された「建物敷地売却決議」「建物取壊し敷地売却決議」(区分所有法第64条の6・第64条の7、原則5分の4以上の多数)も重要です。これは、建物と敷地をまとめて売却することを集会の決議で可能にするもので、老朽化が著しく建替えよりも売却・解体のほうが現実的なケースを想定しています。

これらの決議があった場合も、建替えと同じ賃貸借の終了請求の規定が準用されます(同法第64条の6第3項・第64条の7第3項)。請求から6か月で賃貸借は終了しますが、賃借人は通常生ずる損失の補償金を受け取るまで明渡しを拒むことができます。即時の退去を求められることはなく、補償の内容は交渉の対象になります。

入居している物件がこうした手続きの対象になるかどうかは、築年数や管理組合の動向によって異なります。物件選びの際には、築年数・耐震性・管理組合の活動状況をできる限り確認しておくことが、賃借人にとって重要なリスクヘッジになります。物件の耐震基準の見分け方は賃貸の築年数と耐震基準の選び方——旧耐震・新耐震・2000年基準の違いを徹底解説を参考にしてください。

管理組合の電子化と賃借人のかかわり

区分所有法改正では、管理組合の運営における電子化・デジタル化も推進されています。総会の電子投票、書面に代わるオンライン通知などが整備されました。

賃借人は原則として管理組合の議決権を持ちません。しかし、建替えや大規模修繕に関する情報は、管理組合の活動を通じて早期に把握できる場合があります。入居中のマンションでは、貸主(区分所有者オーナー)や管理会社から管理組合に関する情報が伝達されることもあります。

不安がある場合は、内覧時や契約前に管理会社に対して「現在大規模修繕や建替えの計画はあるか」と確認することを推奨します。重要事項説明書にも管理組合の状況が記載されている場合があるため、確認を怠らないようにしましょう。

築古マンションの賃貸物件選びで注意するポイント

区分所有法改正を踏まえると、特に以下のような物件には注意が必要です。

注意が必要な物件の特徴

  • •旧耐震基準(1981年5月以前に建築確認を受けたもの)のマンション
  • •修繕積立金の積立が不足していると言われているマンション
  • •区分所有者の高齢化が進み、管理組合活動が停滞しているマンション
  • •空き部屋・未払い管理費が多い、または管理不全の状態にあるマンション

こうしたマンションでは、建替えや取壊しの検討が進みやすいと考えられます。なお改正法では、管理が行き届かない専有部分・共用部分について、裁判所が選任した管理人に管理させる制度(管理不全専有部分管理命令など)も新設されました。

一方で、修繕積立金が適切に積み立てられ、管理組合が定期的に活動しているマンションであれば、急に建替えや売却が決まるリスクは低いと言えます。物件を内覧する際には、共用部の清潔さ・掲示板の更新状況・エントランスの管理状態なども、間接的に管理水準を示す目安になります。

賃借人としての正当な権利を理解する

区分所有法改正によって建替えがしやすくなり、建替え決議などがあった場合は、借地借家法の正当事由がなくても賃貸借の終了を請求できるようになりました。ただし、賃貸借が終了するのは請求から6か月後で、補償金の提供を受けるまでは明渡しを拒めるため、即座に明渡しを強制されることはありません。

賃借人が知っておくべき主な権利は次のとおりです。

建替え等に伴う明渡しの場合

  • •賃貸借の終了請求があっても、賃貸借が終了するのは請求から6か月後
  • •賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を請求でき、提供を受けるまでは明渡しを拒める
  • •補償金の交渉は、移転費用・新居の初期費用・仲介手数料などを目安に行う
  • •建替え決議などによらない貸主からの解約申入れには、従来どおり借地借家法の正当事由が必要

急に「退去してほしい」と言われた場合でも、すぐに応じる必要はありません。まずは市区町村の無料法律相談や、国民生活センター、弁護士費用保険などを活用して、正当な対応を確認することが大切です。

まとめ——改正を理解して賢く物件を選ぶ

2026年4月施行の区分所有法改正は、老朽化マンションの再生を促進するための重要な制度変更です。建替えや敷地売却が進みやすくなるだけでなく、決議があれば賃借人に賃貸借の終了を請求できる制度が新設されたため、賃借人にも直接の影響があります。

物件選びの段階で築年数・耐震基準・管理組合の状態を確認することがリスク軽減につながります。また、万一建替えなどで賃貸借の終了を請求された場合でも、6か月の期間と補償金を受け取る権利があることを覚えておきましょう。

賃貸住宅は生活の基盤です。制度の変化を正確に理解し、長く安心して暮らせる住まいを選ぶための知識として活用してください。

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