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契約・手続き

老朽化建物の建て替えで立ち退きを求められたら——入居者の権利と交渉術

2026-05-21

賃貸物件のオーナーから「建て替えのため退去してほしい」と求められた場合、入居者にはどのような権利があるのか。借地借家法が保護する正当事由の要件と、立ち退き料交渉のポイントを専門的な視点で解説します。

老朽化建物の建て替えで立ち退きを求められたら——入居者の権利と交渉術
#立ち退き#建て替え#老朽化#借地借家法#正当事由#立ち退き料
森

監修: 森 信幸エムアセッツ株式会社 代表取締役 / 宅地建物取引士(宮城県 第018212号)

目次

  1. 01「建て替えるので出ていってほしい」——入居者はどうする?
  2. 02借地借家法が守る入居者の権利
  3. 03正当事由が必要
  4. 04更新拒絶・解約申し入れのタイミング
  5. 05立ち退き料とは何か
  6. 06立ち退き要求に対する入居者の対応ステップ
  7. 07ステップ1:通知内容を正確に確認する
  8. 08ステップ2:すぐに同意しない
  9. 09ステップ3:自分の状況を整理する
  10. 10ステップ4:立ち退き料の交渉
  11. 11ステップ5:合意できない場合は専門家に相談
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建物が危険な場合の対応
  • 13まとめ
  • 「建て替えるので出ていってほしい」——入居者はどうする?

    ある日、オーナーや管理会社から「建物が老朽化したため建て替えを計画しています。退去をお願いしたい」という通知が届く——これは決して珍しいことではありません。

    しかし、入居者には強力な法的保護があります。借地借家法第28条は、賃貸借契約の更新を拒絶したり中途解約を要求するには「正当事由」が必要と定めており、オーナーが一方的に立ち退きを強制できない仕組みになっています。

    この記事では、建て替えを理由とした立ち退き要求に対して、入居者が知っておくべき権利と対処法を解説します。

    借地借家法が守る入居者の権利

    正当事由が必要

    オーナーが建物の老朽化や建て替えを理由に退去を求める場合、法律上は正当事由が認められなければなりません。

    正当事由として考慮される主な要素:

    • •建物の物理的劣化(老朽化・危険性)
    • •オーナー自身または親族が使用する必要性
    • •建て替えによる公共性・有効活用性

    単純に「建て替えたい」というオーナー側の都合だけでは正当事由として不十分とされるケースもあり、入居者の生活の継続性(長期居住、高齢・障害、引越し困難な事情)も考慮されます。

    更新拒絶・解約申し入れのタイミング

    • •更新拒絶:期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に通知が必要(借地借家法(e-Gov法令検索)第26条。書面の要件はないが、証拠のため内容証明郵便など書面で送るのが普通)
    • •解約申し入れ(期間の定めのない契約):退去の6ヶ月前に申し入れ

    この期間を守らない通知は法的に無効とみなされることがあります。通知を受け取ったら、まず期日が適正かどうかを確認しましょう。

    立ち退き料とは何か

    正当事由が十分でない場合、オーナーが「財産的給付」=立ち退き料を提供することで正当事由を補完することができます(借地借家法28条)。

    立ち退き料に法律で決まった相場や計算式はなく、個々の事情を踏まえた交渉(まとまらなければ裁判所の判断)で決まります。借地借家法第28条は、立ち退き料などの財産上の給付の申出を、正当事由を判断する時に考慮する事情の一つとして挙げているだけです。

    居住実態金額の考え方
    入居年数1〜3年・若年層法律で決まった相場はない(借地借家法28条)
    入居年数5〜10年・家族世帯法律で決まった相場はない。居住年数や家族の事情は交渉の材料になる
    長期居住(10年超)・高齢者法律で決まった相場はない。転居の難しさは交渉の材料になる
    事業用途含む場合営業補償分を加算

    ただしこれはあくまで目安であり、交渉の余地は大きくあります。

    立ち退き要求に対する入居者の対応ステップ

    ステップ1:通知内容を正確に確認する

    • •通知が書面かどうか(口頭は証拠にならない)
    • •退去希望日と更新拒絶の通知期限が法律上適切か
    • •立ち退き料の提示があるかどうか

    ステップ2:すぐに同意しない

    立ち退きの求めを受けても、その場での合意・署名をする必要はありません。「検討します」と伝えて時間を確保することが重要です。一度合意してしまうと、後から撤回することが難しくなります。

    ステップ3:自分の状況を整理する

    入居者側の事情が強いほど、立ち退き料の交渉力が上がります。

    • •居住年数(長いほど有利)
    • •家族構成(子ども・高齢者・障害者がいると交渉力強化)
    • •引越し先確保の困難さ(希少物件・特殊設備が必要等)
    • •仕事・通勤上の制約

    ステップ4:立ち退き料の交渉

    オーナーから提示された金額が低い場合は、必要な実費(引越し費用、新居の敷金礼金、家賃差額など)を積み上げた根拠をもって増額交渉をしましょう。

    交渉で提示できる実費の例:

    • •引越し業者費用
    • •新居の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)
    • •現家賃と新居家賃の差額(数年分)
    • •転居に伴う住所変更の手続き費用
    • •仮住まいが必要な場合のその費用

    ステップ5:合意できない場合は専門家に相談

    オーナーと合意に至らない場合は、以下の窓口に相談できます。

    • •各都道府県の不動産無料相談窓口(宅建協会)
    • •法テラス(無料法律相談)
    • •司法書士・弁護士(正式な交渉・調停代理)

    最終的に裁判所の調停や訴訟に発展することもありますが、多くの場合は交渉で解決します。

    建物が危険な場合の対応

    建物の劣化が著しく、耐震性や安全性に問題がある場合は、入居者にとっても早期の退去が安全です。この場合でも立ち退き料請求は可能ですが、交渉姿勢は柔軟にすることが賢明です。

    役所に建物の「危険建築物」認定の調査を求めることも一つの手段です。認定されると行政指導が入り、オーナーに対して改修または取り壊しの指導が行われます。

    まとめ

    老朽化による建て替えを理由とした立ち退き要求は、入居者には応じる法的義務がありません。適切な立ち退き料と条件が揃って初めて合意するという姿勢が基本です。

    「急いで出ないといけない」という焦りは不要です。法律は入居者を手厚く保護しており、正当な権利を主張することで納得のいく条件で退去できる可能性が高まります。不安な点があれば一人で抱え込まず、早めに窓口へ相談することが結果的に最短の解決につながります。

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