2020年民法改正で何が変わったのか
2020年4月1日に施行された改正民法(第621条)では、賃貸借契約における賃借人(借主)の原状回復義務が初めて明文化されました。改正前は民法の条文に明示的な規定がなく、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(1998年策定、2011年改訂)が実務上の拠り所とされてきました。施行から数年が経った2026年現在、この条文と国交省ガイドラインを根拠にした退去精算の交渉は、借主側にとって進めやすくなっています。
改正後の民法第621条の要旨 「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化を除く)を原状に復する義務を負う」
この条文のポイントは2つです。第一に、通常損耗(経年変化・通常使用による劣化)は借主の負担ではないことが法律上明確になりました。第二に、借主が負担するのは「故意・過失・善管注意義務違反によって生じた損傷」に限られることが法文に明示されました。
改正以前から国交省ガイドラインが同様の考え方を示していましたが、民法の条文に取り込まれたことで、ガイドラインを軽視した特約を無効と争う際の法的根拠がより明確になりました。
通常損耗と故意・過失損傷の区分——具体的な事例
退去時トラブルの多くは「この損傷は通常損耗か、借主負担か」の判断をめぐる争いです。国交省ガイドラインおよびその後の裁判例から、代表的な事例を整理します。



